長期間大きな変動がなかった「家賃」が上昇しています。
2025年3月の東京都23区の消費者物価指数において「民営家賃」の前年同月比の上昇率は1.1%で、1994年10月以来、30年5か月ぶりの高い上げ幅となりました。
アットホーム株式会社がまとめた2025年2月のマンションの平均募集賃料によると、東京23区の個人向け物件(〜30㎡)は5年前から7.6%高くなりました。
家族向け物件(50〜70㎡)は26.1%と更に上昇率が高い状況です。
東京23区以外も大阪市、名古屋市、福岡市で個人向け、家族向けともに上昇しています。
家賃上昇の背景としては。
1 人口の都心回帰が進んでいるから
→リモートワークの普及で郊外移住が一時期増えましたが、最近は「やっぱり通勤・通学に便利な都心がいい」と考える方が増えてきています。特に若年層や共働き世帯を中心に、再び23区内に住まいを求める動きが強まっています。
2 新築物件の供給が減っているから
→建設コストの高騰(人件費や資材費の上昇)や規制強化などの影響で、新しく建つ賃貸住宅の数が減っています。需要は増えているのに、供給が追いつかない──これが家賃上昇の大きな要因のひとつです。
3 光熱費やリフォーム代の高騰
→既存の物件もリフォーム代や共用部分の電気代などの光熱費の上昇分を家賃に反映する動きが強まっています。
また、家族向けの物件の家賃の上昇については、分譲マンションの価格高騰の影響が大きいです。
不動産経済研究所が発表した24年度の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション1戸あたりの平均発売価格は前年度比7.5%上昇の8135万円で、過去最高を更新しました。東京23区は11.2%上昇の1億1632万円で、2年連続で1億円を超えている状況です。
不動産価格の高騰を受けて購入を見送って、賃貸を選ぶ人が増えており、需要の高まりから家賃も上昇しています。
物件のオーナー側は今後も家賃を引き上げる方針である場合が多く、家賃の上昇局面は当面続いていきそうです。
約130万戸の賃貸住宅を管理する不動産大手の会社では順次、家賃の引き上げを借主に伝えているとのことです。
これまでに2025年中に値上げを予定する約50万戸に通知を実施し、既に約8割が応じているということです。
入居者からすると「値上げ拒否出来ないのか?」というところですが、拒否を続けると入居者にマイナスになる場合が多いのと、「値上げ拒否にも正当な理由が必要」なので注意が必要です。
前提として、家賃値上げを拒否・交渉することは可能ですが、家賃の支払自体を拒否しないように注意が必要です。
家賃の支払いを拒否してしまうと最悪の場合強制退去となる可能性があります。
値上げ前の家賃を支払い続け、物件オーナーと交渉をすることで、退去を避けられる可能性があります。
-家賃値上げ交渉についての流れ-
*家賃値上げには、入居者の同意が必要です。
*値上げを拒否した場合、物件オーナーとの交渉が必要になります。
*物件オーナーは、値上げの根拠となる資料を提示する必要がありますが、入居者側が値上げ拒否を行う場合も根拠として下記のような情報を揃えることが必要です。
(1)現在の家賃が相場と比べて妥当である
→近隣の同様物件の家賃と比較して、値上げが不当である場合。
(2)物価や税金などの変動がない/影響が小さい
→家賃改定の理由として挙げられる経済情勢の変化が実際には見られない。
現在の市況としては(2)の高騰が続いている状況なので、なかなか値上げ拒否を正当化出来る理由を探すのは難しい状況と言えるでしょう。